いけなば教室という営みのこれから

小さな自宅の一角で、数人の生徒さんと静かに向き合う——それが多くの生け花教室の風景です。華道に興味を持つ方の中には、そんな教室の空気感に魅かれ、通い始める方も多いのではないでしょうか。

現在、日本には約4,000軒の生け花・茶道教室があるといわれています。どの教室にも、その土地ならではの空気や先生の人柄があり、まさに「花と人の個性が調和する場」です。師範の資格を持つ先生方が、ご自身の生活と重ねながら、少人数の生徒さんに寄り添って教えておられる。そんな営みが、地域の文化を支えてきました。

けれど、現実はそう甘くありません。実はこの10年で、生け花教室の数は半減し、愛好者も4分の1以下にまで減ってしまいました。背景には、先生方の高齢化や、後継者不足、そしてなにより「教室経営」に対する意識の低さがあります。

華道に限らず、文化は「教える人」と「学ぶ人」がいてこそ続いていくもの。にもかかわらず、どう集客するか、どうリピーターをつくるか、料金設計は妥当か——そうした問いに、きちんと向き合う場面が少なすぎるのが現状です。

とはいえ、それも無理はありません。多くの先生方は、生け花は長く学んできても、「経営」は学んでいないのです。経営者というより、伝統の担い手としての使命感で教室を続けてこられた方が大半。だからこそ、「もっと多くの人に生け花に触れてほしい」と願いつつも、収支を度外視したボランティアのような形では、長く続けられない。そのジレンマに悩む声も、よく耳にします。

でも、思い出してみてください。生け花って、同じ花材を使っても、誰一人として同じ作品にはなりませんよね。それぞれが、その人らしさを映し出している——十人十色の美しさが、そこにはあります。

教室経営もきっと同じです。「正解」が一つではないからこそ、自分に合ったスタイルを見つけることが大切です。好きなことで誰かを笑顔にし、それがきちんと持続できる仕組みに育っていく——そんな未来を、私たちは応援したいのです。

実際、私のまわりにも、少しずつ工夫を重ねながら「文化と経営」の両立に挑戦している先生がいます。最初はオンラインなんて無理…と尻込みしていた方が、いまやZoomで季節の花を届けていたり、Instagramで生徒さんとつながっていたり。動き出してみれば、世界はちゃんと反応してくれるのだなと感じます。

あなたの教室には、あなたにしか生けられない花がある。世界に一つだけの花が、今日もまた誰かの心に届きますように。これからも、私たちはそっとその歩みに寄り添っていきます。

小野 史人

株式会社ライブリッツ・アンド・カンパニー、代表取締役/中小企業診断士/MBA。千葉商科大学大学院 商学研究科 教授。

華道教室を営む母(師範4段)を横目にみつつ、気が付けば、心を整えるために、月に1回は自身で花を生ける経営コンサルタント。

2015年には日本経営診断学会会長賞、2018年には中小企業庁長官賞を受賞。2020年にはBatonzベストアドバイザー2020にも選出されました。
長年にわたり、企業の未来を支える経営の現場に寄り添ってきました。

華道の未来に、経営の力を。美しいだけでは、文化は続かない。
伝統を守りながら変革を生み出すために、経営コンサルタントの眼で華道業界を捉え直します。

経営理念は「成長の歴史と証を共に創り、心を、組織を、未来を、動かす」

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